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碧天飛天の小説サイト

飛天の小説置き場です。本業絵描きですが萌えを吐き出したく作りました。二次創作からオリジナルまで色々予定してます。無断転載を禁じます。よろしくお願いいたします。母艦サイトはBLUE HUMAN http://d.hatena.ne.jp/hiten_alice/ です。

鏡の中の少年 ガンダムAGE

SSガンダムAGE

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僕の時間はあの時に止まった。ユリンが死んだあの時に。

アセム編
僕は家族を知らない。だからいっぱい家族が欲しい。ずっとそう思っていた。でも大切な人達を奪う彼奴らが許せない。戦い続けるならいつ死ぬか分からない。家族を持つなんて無責任かな。ウルフさんみたいに機体を恋人にひとり身でいるしかないのかな。

病院にかけつけるとエミリーと赤ん坊が待ってた。布に包まれた赤ん坊を渡されて手が震える。小さな手小さな足。エミリーに言われるまで僕は自分が泣いてるのに気付かなかった。小さなこの子を守る。家族になってくれてありがとう。

アセムが泣き出した。ミルクもオムツ替えもしたのに。どうしたらいいのかわからないよ。慌てているうちに寝てしまう。眠いから泣いてたらしい。アセムがやっと笑う。何か言葉を喋った気がする。報告するとエミリーが笑う。肩車をせがまれる。大喜びで照明に手を伸ばす。せがまれる度に肩車をしてやる。プラモデルを買ってやる。何故かウルフさんの機体ばかりで遊ぶ。ちょっとむかつく。何度も肩車をせがまれる。男の子は外遊びをさせるべきと乗馬をさせる。前に乗せて小さな身体を抱きしめる。アセムに語りかける。僕らで家族を守るんだ。アセムはにっこり笑う。

久しぶりに基地から帰るとほっとする。今日も大丈夫。彼奴らに奪われたりしない。アセムは元気だろうか。僕のかわりに母や妹を守れ、このコロニーを守れとついそればかり言ってしまう。アセムは何か言いかけて止めてしまう。まだ考えているようで聞いたほうがいいのか待った方がいいのか迷う。エミリーはそんな年頃と言うけれど僕は言いたいことは言ってたよ。

コロニーへの襲撃をアセムが撃退したらしい。あれから襲撃は止んだ。嬉しくなる。さすが僕の息子だ。学校でいい友達が出来たみたいだ。色々相談もしたりするような友達らしい。帰るたびアセムが以前より元気に見えるのが嬉しい。

アセムはもう軍に入ると言う。士官学校に行けば出世も早い。でも側に置いて鍛えるのも悪くないか。忘れた頃にコロニーが襲撃される。アセムを追い詰めながらトドメを刺すことなく逃走したらしい。アセムは何か隠しているようだ。何か言いかけて止める。聞き出すべきかまた迷う。

ウルフさんの下で前線でいい働きを見せるアセム。でももっとやれるはずだと思ってはっぱをかける。さすが僕の息子だ。ぐんぐん腕をあげる。ウルフさんはあいつはお前を完璧だと誤解してるぞと揶揄う。そう見せるように頑張ってるんだよと返す。ウルフさんは笑いながらほどほどにしてやれよと言う。窓の鏡に僕の姿が映る。大人たちに追いつこうと必死に背伸びしていた頃の僕だ。

Xラウンダーじゃないほうが普通だ。何故アセムは焦るのだろう。十分実力がありながらどうして。アセムがまた独房に入れられる。何があったのか。何も言わないからわからないよ。危なっかしくて僕が前線に出るとますます無茶をする。赤い機体がいつもアセムを狙う。デシルも僕を挑発するためにアセムを狙う。アセムをガンダムに乗せたのは僕だ。僕が守らなきゃ。ウルフさんは俺に任せとけという。あいつの扱いは俺の方がわかるって。なんでだよ。

アセムが吹っ切れたように元気になった。ウルフさんのお陰なのがちょっと複雑だけど。お前ら肩に力が入りすぎてんだ。よく似てるんだよと言われる。ウルフさんがいてくれてよかった。なのに。ウルフさんの通信が途絶えた。アセムが泣いてる。 また僕の大切な人がいなくなる。その上アセムが要塞落下を防ぐと言って要塞内に飛び込む。止めたい。一度に2人も失うなんて耐えられない。だが他に方法がない。僕には止められない。わかるから。わかるけど。

地球に落下したアセムを見つける。大気圏を通過したのに無事でほっとする。アセムから初めて間諜だった友達の話をきく。赤い機体に乗っていたのが友達だと。一緒に降下を止めてアセムを助けて散ったと言う。信じられない。地球を守りたいのは奴らも一緒なのだと言う。あいつはいつも手加減していて俺はそれが何故なのかずっと気づかなかったと言う。アセムは友達の願いも守りたい、共存できる方法を見つけたいと言う。命の恩人とやら。お前のせいで厄介なことになった。僕は感謝していいのか怒るべきかわからない。死んだ者にかける言葉じゃないけど。

アセムは前線で優秀な指揮官として僕と二人三脚で改革を行う。アセムもその妻も彼奴らをただ敵とは見られないそうだ。戦い以外の別の方法を考えたいと言う。子供ができたら除隊するよと言う。それがいい。僕と別々の道を歩むことになるんだな。でもそれまでは一緒だ。それなのにアセムは最後の任務から帰らなかった。デバイスだけが見つかるなんて。最後の任務だったんだぞ。なんでこんなことになるんだ。僕が側にいれば死なせたりしなかった。彼奴らは地球を大切に思ってるんじゃない。地球を、大切なものを奪うつもりなんだ。僕は除隊した。もう家族から離れたくない。それにアセムのかわりに僕が父親をしてやらないといけない。

キオ編
キオに肩車をせがまれる。さすがに何度もはやってやれない。キオはプラモデルよりシュミレーターの方が好きらしい。ならば本格的にやった方がいいな。シュミレーターにはage2の機体もある。今は亡き機体だ。アセムのものだと教える前からキオのお気に入りだ。教えてからはage2ばかり使う。調整しないと扱うのが難しい機体だがキオはしなくていいと言う。ageシステムはアセムの腕前に合わせて機能特化させていた。まあキオなら扱えるだろう。

彼奴らを悪魔だと教えるとエミリーもキオの母親も悲しい顔をする。それはアセムの願いではないと。だが僕は彼奴らが許せない。きっとまた来る。心構えが必要なんだ。

彼奴らの襲撃がまたありそうだと情報が入る。しかも総司令は死んだはずのあの男だと。理不尽な怒りが湧き上がる。なんでアセムが死んだのにお前が生きているんだ。

キオは初陣から無邪気な戦いぶりで敵を撃退する。だが知り合いの死が衝撃だったようだ。才能はあるが戦場を知らない子供。悲しむ子供に戦争だと教えるしかない。アセムは戦争のない世界を見せたいと言っていたのに。僕は一体何を見せているのだろう。

アセムが生きていた。しかも海賊とはどういうことだ?なんで生きていて帰って来なかった?聞きたいことは山ほどある。嬉しいのと同じくらい怒りがこみあげる。戸惑いながらも素直に嬉しがるキオに水をさすようなことを言って怒らせてしまう。キオは船の中で父親のことを聞いて回っている。ビデオレターのアセムの映像をまた見せてもらっているらしい。窓の外を見る。海賊船はもう見えない。生きていたのだろう。早く帰ってこい。

アセムが攫われたキオを助けたいというのに声を荒げる。敵地に単身乗り込んで無事に済むかどうかわからないじゃないか。折角生きていたのにまた帰ってこなかったら。2人とも失うことになったら。だが今アセムしかキオを助けに行けないのは確かだ。あの要塞の時のように。いつもそうだ。お前は大切なものを守りたいと言うくせに自分はどれほど大切に思われているかわかってない。だが止めたくても止められない。ただ待つだけとはなんと辛いことだろう。まだちゃんと顔をあわせてもいないのに。

キオとアセムが戻る。いやキオがアセムを連れてきたと言ってもいい。赤ん坊の時に別れたというのにすっかり父と子として打ち解けたようで嬉しくなる。だが僕とは久しぶりに会うのに口論になる。海賊を続けるためにまた戻ると言う。帰って来るんじゃないのか?終戦まで帰らないつもりか?彼奴らと地球とどっちが大事なんだ。

3世代編
月基地の戦いにアセムも加わるという。心強いと思う自分がいる。地球改革の頃の僕の右腕を取り戻したみたいだ。前線を離れたところでアセムとまた赤い機体が戦っている。まだアセムが軍にいた頃のように。奴の目的は今はage3ではないらしい。アセムもここまで来た目的は奴か。主導者の計画の是非を当の敵に問うとは。彼奴らが聞くはずがないじゃないか。

アセムは僕と行動を共にするという。勝手にしろといいながら心は浮き立つ。だがまた彼奴らを気遣うアセムに苛立ち口論になる。元はといえばお前が帰らなかったからだという言葉を飲み込む。かわりにお前の言葉を奴は聞いたのかと問う。アセムはわからない、あいつともいつも口論だったからと言う。僕と一緒にするなとむかつく。だがわかる気もする。同じなのだろう。生きていて口論できることすら嬉しい。僕はアセムが生きていたことで全てを許しそうになってる。けれど帰らない人達のために絶対許してはいけないんだ。そんな風に自分を鼓舞してる。窓の鏡に僕の姿が映る。家族が欲しくてたまらなかった少年の姿だ。自分の手をじっと見る。骨張った老人の手だ。

僕は大切なものをなくしてからずっと子供のままだ。大切なものが増えては浮かれ失われては嘆く子供のままだ。家族に銃を向けるなんて。僕はどこで間違えたんだろう。いつの間に僕は守るべきものを忘れたんだろう。もういいんじゃないかとウルフさんの声が聞こえる。アセムもキオも大切な人を失っている。誰もが失わずに済む方法を考えようとしている。僕を止めようと身体をはる。いつの間に僕は追い越されてしまったんだろう。

僕は家族が欲しかった。守りたかった。でも守られているのは僕だったみたいだ。それがとても嬉しい。止まっていた僕の時計はやっと時を刻み始める。窓硝子には穏やかな老人の顔が映る。

END