輪廻の剣(R18)
root:Fate
眼前に揺らめく巨人の影。バーサーカーを前にもう力は残っていない。
この期に及んで最期に頭をよぎるのは衛宮士郎の顔とはな。
ああ、わかっていたことだ。世の中の誰をも等しい俺にとってあれだけが唯一なのだと。 狂おしいほど想うのが過去の自分とはなんと残酷なことだろう。
身体が空気に溶けてゆく。座に帰る時が来た。
アーチャーは士郎の駆けて行った扉の方向を見つめる。もう会うことはないのだろう。 いずれ残酷な未来を辿る彼の身に何か残せただろうか。
塵になり座に帰るこの身に何か残るだろうか。
あの夜、廊下で一人でいた士郎の姿を思い出す。
夜の硝子を鏡に映る姿は遙かな過去にも見知った姿。士郎は具現化した俺の気配に振りむくがただならない雰囲気を感じとったのか後ずさる。俺は壁際に追い詰めてずるずると屈み込む奴に膝をついて壁に手をつき両腕の檻に閉じ込める。
「なんだよ」
真っ直ぐ見つめる奴に顔を近づける。此方の気も知らず目を逸らさないのに苛立ち唇を触れる。目を丸くする奴にさらに深く口付ける。舌を深く差し入れ士郎の舌を捉え絡ませ熱い口内を貪る。逃げようとするのを許さず顎を捕らえるまた深く入れ弄る。止められない。もっと、もっとだと身体の奥深くから衝動がこみ上げる。取り出した剣で士郎の服をシャツを切り裂きズボンを裂く。下着も切り裂き、布切れと化した衣服の残骸が士郎の足元に落ちる。そのまま士郎の身体を引き倒し両足を掴んで開き中心を晒す。
「よもや逃げられるとは思うまいな」
アーチャーは勃起した性器を士郎の後孔に当てる。士郎が息を呑む。亀頭を熟れた孔に力任せに突き入れる。
「駄目だ、アーチャー」
声を詰まらせながら士郎は喘ぐ。太い腕で檻のように士郎を囲み割れた腹筋を士郎の腹に押し付け動きを封じる。深みに嵌るのが恐ろしいのか。震える士郎の身体にみっちりと隙間なく入れられるアーチャーの陰茎は士郎の孔を押し広げながら進む。アーチャーが腰を引きまた捻じ込むたびにより奥に入る。
「怖いのか?どこまで貫かれてしまうのかと」
痛みと恐れの表情を浮かべる士郎にアーチャーは獰猛な笑みを浮かべる。身体を起こし接合部を撫でる。
「お前の目で見るといい」
士郎は自分の身体に浅黒く太いアーチャーの屹立が半分ほど埋められているのを目の当たりにする。
「全部入れる。根元までな。」
「アーチャー魔力供給をしたいのならばそんなことまでしなくてもいいはずだろ」
「黙れ」
そんなことはわかっている。英霊は剥き出しの心。渇望も殺意も自覚すれば止める術はない。士郎にだけ抱いている激しい感情。生きていた頃には感じたことの無い人への執着心。庇護欲にも殺意にも変質し得たであろうその執着は情欲に形を変えた。だが士郎にとってはアーチャーは理想そのもの。その思慕は隠しても隠しきれない。
奴がなぜ隠すかわかってはいる。葛藤し虚勢をはっているのだ。だが自分を避けるのだけは苛立った。だから追いつめた。無言で威圧され戸惑い何だと目をそらす士郎に腹の底が熱くなった。
激しく動きながら唇を貪る。士郎の腰を掴み身体を打ち付ける。奥をごりごりと突き攻め立てる。ズッズッと抜き差しすればいつしか屹立の根元まで挿入を果たす。鼓動とともに締め付ける士郎の柔肉。えも言われぬ快感。胸をざわめかす。上半身を起こし見下ろす。組み敷いた士郎の身体は鍛えられたとはいえしなやかさはそれでも少年のもの。アーチャーの逞しい戦士の身体にはまだ程遠く押さえつければ身動きひとつとれない。男の印に容易く貫かれれば魂すら縫いとめられる。
「お前なにやってんだよ」士郎はほろほろと泣きながら問う。「お前は俺だろう」
「わかっていたのか」
「俺にわからないわけないだろう。遠坂は知らないんだろ」
「気づいてないだろうな」
「俺が俺と、なんて」
「だからなんだ」
触れられる存在犯せる身体。狂おしく惹かれる剥き出しの心には禁忌など片腹痛い。灼熱の欲望を捻じ込み士郎の身体も心も焼き尽くす。うねる士郎の肉壁を押し広げ何度も深々と貫くと士郎は甘く悲鳴を上げる。腰を引き浅い処を細かく揺り前立腺に亀頭をぐりぐりと擦り付けると感じて薄く涙を浮かべる。
「感じるか。感じるだろう。お前の身体で俺の知らない処はないからな」
「あ、あ、やめ、アーチャー」
いつ果てるとも知れない交わり。アーチャーに翻弄され朦朧としながら士郎は喘ぐ。アーチャーは士郎に深いキスを繰り返す。腰を強く打ち付けて悲鳴ごと呑み込むように舌を摺り合せる。首筋に唇を押し当て吸い付き赤い痕を付ける。乳首を舐め舌で転がし吸うと士郎は感じて小さく首を振る。アーチャーは獣のようだと自分を思う。士郎にペニスを根元まで呑み込ませ引き抜きまた貫いては突く。求めて手に入れてなお足りない。いまだアーチャーの筋肉質な胸を押して抵抗する士郎が歯痒い。
「頃合いか。お前の中でいく」士郎は驚き狼狽える。
「や、やめろ。そんなこと」
「きかんな」
アーチャーは上半身を倒し士郎の身体に盛り上がった腕を回して押さえつける。奥までペニスを押し入れると引き抜いて激しく身体を打ち付け体内を突く。
「あう、いやだ」士郎が悲鳴を上げる。
「まだ言うか衛宮士郎」
激しく抜き差し続けるアーチャーは苛立ちを覚えてさらに肉壁の奥を激しく擦る。
「いや、いあ」
感じて喘ぎながら抵抗の色をまだ見せる士郎。諦めの悪さはわかっているがなとアーチャーは自嘲する。受け入れればいいのだ。迫り上がる熱を感じてアーチャーは低く呻き迸りを士郎の奥に注ぐ。
「そんな、お前」士郎の声がか細く震えている。
「今更だろう」
呟く士郎の収縮し弛緩する肉壁に絞られ陰茎を奥に緩く押し全て出し切る。荒く息をつく士郎は顔を覆う。だがアーチャーは士郎の腰を掴みまだ陰茎を抜かず中で前後に揺らす。陰茎が熱を持ちまた硬さを取り戻してゆく。
「アーチャー、嘘だろ」
中で硬くなったものに士郎は気づき身を捩る。
「これで済んだと思ったのではないだろうな」
アーチャーは士郎に覆い被さりぐっと身体を押し付け中にズッと押し入れる。突き入れ 引き戻すほどにアーチャーの陰茎が膨れて硬くなり士郎の後孔の肉壁を圧迫する。士郎は上気した頬に眉を潜め懇願する。
「頼む、もう無理だ。もう、俺は」
「まだ夜は長い。お前に俺を刻み込む時間はたっぷりある」
翌朝。
昨晩の魔力供給を越えた交わりのことを忘れたように士郎は普段どおりに振る舞う。台所で食事を支度をする士郎。アーチャーは士郎に近寄り服を掴んで胸を肌蹴る。点々と肌を染める昨夜の情事の痕。
「離せよ」
士郎は狼狽してアーチャーを睨みつける。身を捩り身体に赤く散らばる口付けの痕を隠そうとする。士郎は後ずさり台所からを出てゆく。逃げる士郎をアーチャーは追わない。赤い跡。魔力の痕。夜になると士郎の身体は疼く筈だ。
その夜。アーチャーは襖を見つめて士郎が自分を求めるのを待つ。隔てる襖の向こうで押し殺した喘ぎ声が聞こえる。
「あ、はあ、」
士郎は狂いそうになるほどのせりあがる熱の奔流に必死に堪える。腕に爪を立て声を上げないように袖を噛む。アーチャーは立ち上がると襖を開けて士郎の部屋に入る。
「入るな」
息も絶え絶えになりながら非難の目を向ける士郎にアーチャーはため息をつく。
「助けを求めればいいだろう」
「いやだ」
アーチャーは眉を顰め、悶える士郎に近寄り仰向けにしてのしかかる。
「強情だな。縋り付くまで待つつもりだったが私の負けだ」
「アーチャー。何をした」
「お前に魔力を注いだ。飢えるのはそのせいだ」
「なんで、なんでそんな」
「お前に英霊の飢えを多少でも味わわせてやろうと思ってな。だがまったくお前は呆れるほど強情だ」
アーチャーは士郎に口付ける。
「こっちが限界になるとは」
身体を繋ぐことをなぜ厭う。何故心を身体を狂おしく求めないのかと苛立つ。自分と同じように。同じことを求めながら。快楽に抗う士郎に憤り。魔力供給を行わずにただ求める。己の懸想を自覚する。お前は私に憧憬は持てど好意はどうなのか。抵抗があるのはわかる。だがお前は私と同じなら同じ想いを持つのではないか。身体を開かせ突きながら言葉に乗せることなく身体に問う。足を抱え上げより深く貫く。組み敷いた身体をめちゃくちゃに突きながら追い詰める
「お前の身体は俺を咥えこんで離さないようだが。衛宮士郎」
「やめろ」
快楽を感じるのは罪悪だと、快楽を追うのは許されないと思っているのだろうお前は。お前のことはだれよりもわかっている。だがそれは許さない。
「お前の体はもっとと言っている。俺を求めているはずだ。認めろ衛宮士郎」
「それ以上言うな。アーチャー」
士郎は顔を覆い隠す。別の身体に別の心だが同じ魂を宿す存在。士郎にとっては私は理想だ。私にとってはまだ理想を失い傷つく前の少年の影だ。自分であり別の肉を持った自分でない者。利他主義の自分が唯一傷つけたいと強い思いに囚われる者。唯一の者。
root:Unlimited Blade Works
俺の体の中に残された奴の残滓。
焼き付いて時折燠火のように燃えあがる。
今なら分かる。同じ人生を送り同じ最期を終えた今なら。
俺にぶつけるしかなかったあいつの狂った想いに。耐え難いほどの孤独と渇望に。
壊すほどに己を犯しておきながら身体を賭して己を守った。
あの大きな背中を憎んでいるのか愛しいと思っているのかすらわからない。
俺のような存在はあってはいけないのだ。
あいつは俺の理想、俺の未来、俺の絶望だ。
俺は俺を、俺はあいつを殺すのだ。
END