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イゼルカント・レポート ガンダムAGE

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 いずれ手に入れるエデンを見ておくのだ。お前や今この地に生きる皆には想像もできないかもしれない。本当に存在するとも信じられないかもしれない。今は私だけが知る地球。いつか帰る場所エデン。

×年×月×日
何光年もの旅の末火星に辿りついた。私はフェザール・イゼルカント。若輩ながら移民団に抜擢された遺伝子工学者。新天地火星は赤い砂漠。ここを開発して私達は創造主となる。
×年×月×日
この土地は未知のウィルスがあった。マーズレイと名付けた死病により次々と乗組員が死んでいく。ついに私1人になった。救助信号を打つ。救助が来るまで生き延びねばならない。私もいつ死ぬかわからない。冷凍睡眠に入る。起床するが通信は未だ入っていない。待つしかない。
×年×月×日
1人の孤独に耐えかね許可なく私自身のクローンを作る。睡眠学習を施し成長させる間冷凍睡眠に入る。起床して自分と瓜二つの存在を目覚めさせ生活する。孤独が埋められる。だがウィルスのせいで彼は長く生きられない。僕は何のために生まれてきたのと言う彼に私は手を握り謝り続ける。
×年×月×日
通信は入らない。見捨てられたのか。ならば生き延びることを考えねばならない。許可など不用。乗組員全員のクローンを作成し私は冷凍睡眠に入る。目覚めると多くのクローンが成長している。人出を得てコロニーを建設。衛星軌道上に打ち上げ火星の大地を離れる。これでマーズレイから逃れられる。クローン達と喜びを分かち合う。
×年×月×日
次世代の子供たちも生まれる。私も伴侶と子を得る。だがコロニーでもウィルスからは逃れられない。人々は若くして死んでゆく。研究し改良を重ね病を克服するまで私は死ねない。短命な種族として諦観する子供達にそうではないのだと教えねばならない。
平穏な日々の中私の子も失われる。伴侶は今後私を1人にしない為に冷凍睡眠に入る。孤独がまた訪れる。膨れ上がる望郷の念。私と乗組員を見捨て忘れ去ったであろう星。帰りたい私の星。帰れない私の星。
×年×月×日
失われた遺産が見つかる。戦争の為のテクノロジー。研究し応用すればコロニーを救うことができるかも知れない高度な技術だとわかっている。そんなことはわかっている。地球に我々の存在を知らせねばならない。帰ったとて我々を受け入れないだろう。次世代から地球の存在と戦争の必要性を教えこみ長期計画を練り優れた子供を選別する。
×年×月×日
私の身にマーズレイの兆候が見える。とうとう私の番か。だが死の前に一目地球を見たい。端末として兵を送り込む。彼らの目を意識を借りて見た地球とそのコロニー。なんと変わってしまったことか。いや、変わってなどいないのかも知れない。我々を見捨てた過去の地球となんら変わらないのかも知れない。
×年×月×日
また兵をコロニーに潜入させたのは正解だっただろうか。間違いだっただろうか。迷いが生まれる。火星に来る前の私達のように思いやりと優しい心。希望に満ちた人々。懐かしく羨ましく惹かれてやまない。彼らと戦うなら滅ぼすことになるかも知れない。選別せねばならない。
×年×月×日
望郷の念に囚われ私の創造した世界の人々を巻き込んだ。地球のことなど知らない子供達にあり得るはずもなかった望みを吹き込んだ。ただ帰りたいとその思いで。罪深いと知りつつ望郷の念は押さえられずに。
×年×月×日
また私のクローンを作る。最後のクローンになる。私のかわりに地球を見てくれるだろう。私のかわりに地球の大地を踏んでくれるだろう。失われる私と乗組員の仲間達のかわりに。

END